1. 遺言の目的

遺言は、自分が生涯をかけて築き、守ってきた大切な財産を、自ら最も有意義に分配譲渡するために行う遺言者の意思表示です。
相続をめぐり、遺言がないため、親族間で争いの起こることは少なくありません。相続をめぐる問題は骨肉の争いに発展することが多く、遺言は、遺言者自らが、自分の残した財産の帰属を決めるため、相続をめぐる争いを防止することができます。

2. 遺言の効力

遺言は、遺言書の法的効力は強力で、法定相続分に優先します。
民法882条は、「相続は死亡によって開始する」と定めており、相続財産を受け継ぐ方法には、相続人間の協議(遺産分割協議)による承継と遺言による承継があります。前者は、相続財産の配分を「財産を受け継ぐ側(相続人)の意思」に任せて決める方法であり、後者は「財産を残す側(被相続人)の意思」に任せて決める方法です。
重要なことは、遺言は民法で定められた各相続人の取り分である「法定相続分」に優先し、「遺言がない場合に初めて、法定相続のルールを基準に、遺産分割協議にもとづき財産分けをする」ということになり、相続においては遺言が最優先されるということです。

3. 自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、全文(財産目録を除く)、日付、氏名を自筆で書き、押印して作成する方式の遺言書です。自筆証書遺言は自宅で保管、または信頼できる知人などに預けて保管します。
自筆証書遺言は、簡便かつ誰にも知られずに作成することが出来る反面、法律的に見て不備な内容で無効になってしまう危険性や方式不備で無効とされる危険性も大きく、また発見されない危険性や紛失、偽造・変造される危険性もあります。また、お亡<なりになられた後、裁判所の検認手続きが必要です。 上記のような危険性を軽減するため、2020年7 月から自筆証書遺言を法務局で保管する遺言書保管制度が創設され、法務局で方式に適合しているかどうかの審査をしたうえ、確実に保管し、相続人がその存在を把握できるようになりました。この制度を利用した場合には面倒な検認も不要なので、すぐに遺産相続手続き進むことが出来ます。

4. 公正証書遺言

公正証書とは公証人役場で作成する公文書で、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言を作成する方式の遺言書が公正証書遺言です。検認手続きが不要であり、直ちに遺言内容の実現が可能です。
公正証書遺言は法律の専門家である公証人(公正証書の作成、定款や私署証書(私文書)の認証などを行う公務員)が関与して作成されるため、自筆証書遺言のように方式不備により事後的紛争が起きて遺言が無効になるリスクが基本的にありません。